あなたは運が良かっただけ、運も実力のうち。
成功者が言われ続ける言葉の一つですが、実際のところどうなのでしょうか?
アメリカのフォード・モーター創業者であるヘンリー・フォードは「成功者は他人が時間を浪費している間に先へ進む。これは私が長年、この眼で見てきたことである。」という言葉を残しております。
一方、世界中の企業の業績を改善してきたデール・カーネギーは「好運に出合わない人間など一人もいない。それをとらえなかった、というまでだ。」という言葉を残しております。
これは努力が成功をもたらしたとも、運が成功をもたらしたとも、どちらともいえないでしょうか。
今回はそんな成功者たちは努力が実を結んだのか、それとも単純に幸運だったからのしあがれたのかを研究した面白い論文を紹介していきます。
※今現在努力している人や成功者を否定しているわけではなく、あくまでという考え方もある、結果の一つだということをご理解いただきたい。
成功の定義
まず、一口で成功とはといっても色々な意味がありますが、ここでは何かを成し遂げた結果、資産を増やすことを指して進めていきます。
これらについて真面目に調査した論文2つを紹介していきます。
シミュレーションによるアプローチ
イタリアのカターニア大学のプルチーノ氏が発表した論文について紹介いたします。
研究の内容として、人間の才能が人生を通してどう使われるかをシミュレーションし
成功する上で運が果たす役割の特定を試みる。というものです。
TALENT VERSUS LUCK: THE ROLE OF RANDOMNESS IN SUCCESS AND FAILURE
https://www.worldscientific.com/doi/abs/10.1142/S0219525918500145
この研究では、40年のキャリアをシミュレーションするというものであり、
幸運・不運な出来事が無作為に散りばめ40年のキャリアを追跡し、
富は、幸運な出来事によって増え、不運な出来事によって減るものとしてシミュレーションを行った。
シミュレーションの最後には全員が資産順にランク付けされ、
その資産が形成された経緯や、成功者に共通の特徴の有無を見極めるため、チームが各個人の「人生」を詳細に分析した。
シミュレーションの結果
富の配分は現実世界のデータとおおむね一致していた一方で、富の分布は才能の分布とは一致しなかった。
むしろ最富裕層は、才能面ではトップから程遠い結果となっており、なんと純粋に幸運が富をもたらしたようだ。
チームが幸運度を元に個人を順位付けしたところ、幸運と全体的な資産の明確な相関関係が示され、
最も幸運だった層は資産の面ではほぼ最上位に入った一方で、最も不運だった層は最底辺近くに入ったことが分かった。
要するに人生ゲームのようだということですね。
人生ゲームに必勝法があるかもしれませんが、大多数はルーレットの出目と止まる位置で資産を減らすのか、それとも富を得るのか。ということです。
ゲームの公平性に気が付けるか
次に、「仕組まれたゲームの勝者は『このゲームが不公平だった』という事実を見抜けるのか?」という研究結果をご紹介します。
これは、ニューヨークにあるコーネル大学の社会学研究チームが行った実験では被験者に2人で行う単純な 2 人用の 7 ラウンドのカード ゲーム「スワップ ゲーム」を行わせました。
It’s not just how the game is played, it’s whether you win or lose
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aau1156
スワップゲームとは
スワップゲームとは簡単に言えば2人で行う大富豪みたいなもの。
- 各ラウンドの開始時に各プレイヤーには、他のプレイヤーには見えない 9枚のカードがランダムに配られる。
- 先手は任意のカードを場に出し、後手は先手が出したカードよりも大きい数字を出していく。
- どちらかのプレイヤーがカードを出せなくなった際に、「パス」を宣言し、場を流す。
- 「パス」を宣言していないもう片方のプレイヤーからまたカードを出していく。
- 手札がなくなったプレイヤーの勝利。
次のラウンドでも同様に9枚のカードがランダムに配られますが、前のラウンドの敗者は、配られたカードの中で最も大きな数字のカードを
勝者は最も小さい数字のカードを交換して計7ラウンド対戦してゆき、最も多くのラウンドを獲得したプレーヤーが勝者となります。
スワップゲームの肝
ここでポイントとなることは、大富豪同様、勝者、敗者で最強、最弱カードの取引があることと
プレイヤーA,Bといる場合、先手となるプレイヤーは必ず最初にカードを出すことができるということ。
勘の良い方はお気づきかと思いますが、第一ラウンドで有利なのは必ず先手でカードを出せるプレイヤーということ。
第一ラウンドで勝利した先行プレイヤーは、次回以降敗者とのカード交換で強いカードを手に入れることができ、次のラウンドも勝ちやすくなっていきます。
一方、後攻のプレイヤーは第一ラウンドで負けてしまうと、第二ラウンド以降かつ確率ががくっと減っていきます。
つまり、スワップ ゲームは、戦略的な意思決定の必要性を取り除くことによって、スキルと努力の本質的な影響を最小限に抑えたゲームということです。
プレイヤーたちはゲームの不平等に気が付いていたのか
その後、スワップゲームを終えたプレイヤーは、以下の3つの項目からなる短い調査を受けました。
- ゲームの公平性
- 不平等の原因に関する認知的信念
- 結果への満足に関連する感情的反応
大方の予想通り先行プレイヤーが勝ち続けました。
先手を取り有利な条件で勝利を重ねたプレイヤーは調査に対して、「このゲームは公平だった」「勝ったのは自分のスキルによるもの」といったゲームの不平等に気づいていない回答を、敗者に比べて2倍も多く回答しておりました。
研究結果から見えてくること
この二つの研究結果から言えることは、成功者は「運」要素によるものが大きく、
その成功者は、運要素が見えず、努力で成功してきたと認識する傾向にあるということです。
以上を踏まえて、冒頭に紹介したヘンリー・フォード氏の言葉とデール・カーネギーの言葉を今一度振り返ってみてみましょう。
ヘンリー・フォード
「成功者は他人が時間を浪費している間に先へ進む。これは私が長年、この眼で見てきたことである。」
デール・カーネギ
「好運に出合わない人間など一人もいない。それをとらえなかった、というまでだ。」
確かに、成功するためには運が必要。
その運をつかみ取るためには取るためには努力が必要ということにならないでしょうか。
最後に
今回、運と実力偉人たちの名言と研究から見えてくる世界を紹介しました。
いつめぐってくるかわからないチャンス、それをつかみ取るため日々努力し続けること、
おごることなく、謙虚な姿勢で日々の生活を送っていくことの重要さを理解いただけると幸いです。
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